「混沌の大地ーイスラムの女と僕の憂鬱ー」(浅井陽一著)

【タイトル】「混沌の大地ーイスラムの女と僕の憂鬱ー」(浅井陽一著)

【著者】浅井 陽一

【形態】電子書籍

【内容】

 

主人公の「僕」(ヨシオ)は、フランス語と英語の翻訳・通訳者として雇われて、アルジェリアにやって来た。「僕」はコンスタンチンヌから車で二時間近く離れた野営地にある事務所で働くことになった。周囲はテロの脅威から守るために高い塀とライフルで警備されていた。
「僕」は、初めて見るアルジェリア人と、イスラムの生活習慣、宗教に大きな興味を持つ。また、身近で働くイスラムの女性に魅了され、やがて、イスラムの若い女性、イマネと出会う。
日本の企業はムスリムの女性をタブー視する傾向があった。多くは、イスラム教を忌避した。「僕」の行動は日本人の目から批判すべきものと映る。「僕」は自分の拠り所のない不安定さに常におびえていたが、職場の人間から嫌われても、外国人からは好かれ、多くの友達を持つにいたった。
交流を深めるイマネと、ひょんなことから、イマネの家庭に招待されることになった。友人も同行するはずだったが、結果、当日僕はイマネと二人で会うことになる。
そしてこれが、最後にはイスラムのタブーに触れることになり………。
この体験談では、孤独者としての「僕」と企業倫理との間で生じる様々の問題、人間性を重視した考えと、個人の自由を営利のために否定する立場での葛藤が、アルジェリアの若い女性との出会いによって、屈折し、表面化する。
日常生活に宗教意識を持たない日本人と、イスラム教によって生活の隅々を支配されているアルジェリア人たちの違いが、僕とイマネや事務所で働く女性たちの姿を通して、ありありと浮かび上がってくる作品。

目次

[混沌の大地」~イスラムの女と僕の憂鬱~

第1章 イスラムの女たち
第2章 イマネと宗教
第3章 僕の憂鬱
第4章 崩壊

「キャンパス」(同時収録作品)
あとがき

あらすじ

著者は仕事でアルジェリアに赴任し、日本企業の中での翻訳の仕事をしています。

日本の企業風土にあわない著者は、孤独を抱えながらもイスラムの世界に魅了されていきます。

仕事を通して出会う女性たちとイスラム独特の世界観に魅了され、もっと知りたいとイスラムの世界に入っていくものの、結局、元来日本人であるがゆえにストレートには受け入れられない世界であることにも気づき、翻弄されながら苦悩と闘っていくというお話。

日本の女性は幸せ、そんなことを思わずにはいられない、宗教という壁が阻む切ない恋物語も。

こういった海外の事情は日本にいたらわかりませんが、世界にはこういう場所も人もあるんだ、という新鮮な驚きがありました。

私が読んで興味深かったのは、まず、日本の女性はすごく幸せだなあ、ということ。ここに登場するイスラムの女性たちは、それぞれに個性豊かです。しかし、自由は少ないかもしれません。

日本は恋愛も自由です。でも、やはりイスラム教のもとでは、恋愛はある意味自由でありながら、やはり宗教の壁に阻まれます。

日本にも宗教はもちろん存在しますが、国や政治といったものに宗教色はありませんから、日本の女性はとても自由です。

さらに、日本の女性は、職業を選択するのも自由。結婚して、仕事をやめようが、働こうがどちらも選択ができます。

でも、イスラム教が色濃く反映される国の女性は、やはり宗教によって自由な生き方をできないということがあるのです。

また、著者が”あとがき”でも書いていますが、アルジェリアは産業がないために、生きるためには、母国をすて海外に移住するしかないというのも、この国の深刻な一面です。

長編ですが、最後まで是非読んでください。最後のどんでん返しが、宗教の違いを色濃く表しているように思います。

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