相手の立場にたって物事をわかりやすく伝えることは教養の一つ
最近、「死ぬほど読書(丹羽宇一郎著・幻冬舎新書)」をたまたま本屋さんで見つけて読んでみました。
これは、読書フリークな著者が、読書の良さを余すところなく語り尽くしたものでした。
読書が人間の幅を広げる、教養を磨く、思考力を鍛える、仕事の姿勢を正すなど、理にかなったことが書いてあり、ふんふんと納得しながらよみました。さらには、「セレンディピティ(素晴らしい偶然に出会ったり、予想外のものを発見するという意)」を引き越しやすくなる、本は人を見る目を養うという本の底力まで、力説しています。
実に、わかりやすく書かれていて、なかなか良い本でした。
難しい本は著者に問題がある
で、中に、「理解できない本は著者にも問題がある」と小見出しがあって、こう書かれています。以下本文引用です。
「難解であるが故に深いものが書かれている。抽象度が高いものは高尚である。そんなふうに思い込んでいる人は少なくなりません。しかしながら、それは錯覚です。やさしいことを難しい言い回しにするのは簡単なことですが、反対に難しいことを平易に表現するのは難しいことです。」
いや、本当にそのとおりだな、と思いました。
やはり、学者や研究社、医師などの「頭がいい」と言われる人が書く文章が難解なのは、たぶん、自分はサッサと理解ができるので、伝えようとしていることも相手に伝わると思っていることもあるのでしょう。あるいは、相手のことなど考えない。自分の知識を語れば伝わるもんだと思っているのかもしれません。
私も出版業界にいて、しかもIT系書籍に関わっていましたから、難しい本を書く著者はたくさんいました。
で、この著者も言っているのですが、「難解な本を書く人は、頭が整理できていないではないか」と。
なるほど、と思うところがあります。
思考をアウトプットするから自分で情報を理解できる
本を書く時、やはり最初に書く内容を出し切ってから企画をまとめていかないと、うまくまとまらないことがあります。
で、ここで言う、出し切るというのは、メモ書きでもいいですし、ブログでもいいですし、本に書かなければならないことを、まずは書いてみたり、言葉に発したりしてアウトプットするということです。
いったんアウトプットすると、頭の中は整理がつきますから、それから企画を考えたり、すでに企画のベースがあればそれを深掘りして論理的な構成にしあげていくことが大切です。そこまでの段階にきたら、もう本の半分はかけたような状態なはず。
ちなみに、人々の思考が記憶に刻まれ、「理解する」瞬間というのは、思考をアウトプットしたときだそうです。思考のままかかえていたところで、アウトプットしない限り、自身が理解できないそうです。
そうして、アウトプットして、自分の思考を理解し、情報を整理した上で原稿を書き始めれば、もっと読者を意識した書き方ができるはずです。
頭の整理ができてないから、読者のことを考えられない。読者のことを考えなくちゃいけないと思っているけれども、そこに行き着くには、膨大な時間がかかるのかもしれません。
それだけ、頭の中は複雑でしょうから。
「相手の立場に立って物事を考えられる」ことは教養だ
でね、この著者、言うのです。
「相手の立場に立って物事を考えられる」というのが、教養の1つだ、と。
つまり、頭がいいことと、教養があるということとは、ちょっと違うということが著者は言いたいのですね。
そして教養は読書によって磨かれると。
そのとおりです。たとえば、社会で幅広くいろいろな世界の人と交流し、活躍している人は、人間的にも魅力的な方も多いです。
同様に、読書をただ読むだけでなく、想像力たくましく考えながら読んでいくことは、やはり、著者を通して1つの世界を知ることです。
それが積み重なれば、お金には変えられない価値につながるはずだと著者同様に思いますね。
この著者が、この本を書いた理由が、「読書はしなければいけないものなのか?」という大学生の新聞投稿欄の記事がきっかけだったそうです。
「自分で考えられることができない若者が増えていると」と著者。
読書をしたければ、すればいいし、それが役に立つか立たないかは自分で判断できることだと。できないのは、本を考えながら読まないから、と。
読書について、いろいろ考えさせられた本でした。
本の著者を目指す人は、一読をお勧めします。
投稿者プロフィール

- 出版コンサルタント・テクニカルライター
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でんでんむし出版代表 傍嶋恵子(そばじまけいこ)
1997年より、パソコン普及期に必要とされたパソコン解説書を、テクニカルライターとして13年間にわたって約60冊執筆。豊富なライティングと書籍企画経験や実績を生かして、2013年、電子書籍出版を支援する「でんでんむし出版」を設立。セルフパブリッシングを支援。また、電子書籍の普及による出版事情を考慮し、「本を書く」ということを寛容に捕らえて、現代のおける人々の情報発信の重要性に目を向けるている。「本を書く」というと、多く出版社は「本を作る」ことに焦点を置く。が、コンテンツの指導ができない出版社が多いなか、本の内容に対して指導をし、優良なコンテンツを作り上げるところを強みとしている。
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