本を書くために必要なのは、まず探究心
探究心がなければ正しい良質な情報は得られない
本が書ける人と書けない人の違いの1つに、物事を掘り下げる力があるかどうかがあると私は感じています。
当然本を書くには、書くテーマに対する情報をたくさん所有していなければなりません。
つまり、「専門家」が本を書くのであれば、やはり「専門家」なりの情報がなければ書けないものなのです。
さらに、本に書いて伝えるには、何をどのように伝えればいいのか、と情報をチョイスしていく力や、それらに自分の情報を超えた内容を伝えなければならないときには、調べて、自分の情報に絡めて発信していく力も必要です。
そこで必要になることは、常日頃の探究心なのですよね。この探究心がなければ、情報は拾えません。
本物の情報を調べるという意識が大切
Webに溢れる情報は、どちらかというと表面的なものが多いです。
情報の宝庫ではあるかもしれませんが、断片的な情報ばかりで、自分が知りたいことを調べるものならば、あちこちのサイトを検索して、まとめるしかありません。また、そこに書いてある情報が正しいとも限りません。
私は、つい最近、「手作り石鹸」に興味をもって、石鹸を手作りすることにしました。
一度、手作り石鹸の体験的な単発講座で、すべて準備された材料を、指示通りに作業して石鹸を作った経験がありますが、それは「ただ作った」だけで、何の知識も不要でした。
完成した石鹸はもちろん質の良いもので、使っていても満足しました。石鹸が無くなった頃、また作ろうと思えば、同じ講座に行って作ってくればいい話だったのです。
しかし、あるとき、理系のおじさまが、石鹸ならば「けん化」がどうのこうのという話をしてきて、最初よくわかりませんでした。
私は、元々理系ではなく文系で、しかも、化学とか苦手だったし、言葉そのものをあまり聞いたことがありませんでした。それに、石鹸講座でも「けん化」なんて言葉使っていませんでした。
でも、再度作ろうと思ったときに、「けん化」についてちょっと調べてみたんです。
苛性ソーダと油が混ざって起きる現象をけん化というわけですが、それぞれ使用するオイルによってけんか率が違うことや、苛性ソーダーの量を調整することで、しっとりとした石鹸ができるなどを知りました。さらに、苛性ソーダは精製水で溶かしますが、水道水だとどうのこうのとか、他の物質を入れると分解されるから危険になることもとかいろいろ。
石鹸レシピには分量は書いてあるのでその通りにやればいいわけですが、そういうことを知ると、今度は、それならば、自分の肌が喜ぶ石鹸を作りたい、と思うわけです。
そして、詳しく知れば、自分で石鹸レシピも作れるわけです。知れば「なんだそれだけのことか」で納得ができるのです。
結局、知識を得て1つ納得できたことが、私の探究心に火をつけました。
読者が知りたいことにどこまでアプローチできるかが鍵
そこで、1つ作ってみました。石鹸は手順通りにできますが、作業中、謎なことばかり。
最初は、ネットでみつけたレシピをチェックし、書いてある通りにやったのですが、書いてあるとおりにならないことに、私の探究心はうずきます。
対策を探すと、ネット情報は、どれも断片的なものばかりで、完全に納得する解答には出会えなませんでした。
結局、作り方を写真入りで書いているだけで、「もう一息」というところで情報が抜けていて、私が欲しい情報にあと一歩手が届かない。
そんなサイトばっかり。
しかし、断片的にでも、いろいろなことが知ることで、「そうなんだ」と思うことも多く、それをさらに調べことで知識は増えました。
そのうち、ネットじゃ情報を集めきれないので、Amazonで本を探したり、実際に本屋でせっけん関連の本を探して、立ち読みして調べました。
そして、ついに、自分が欲しい情報がしっかりと書いてある本を見つけたのです。
単なるレシピ本が多い中、それだけは異色で、著者の言葉で、石鹸をつくるのに必要な内容はすべてきちんと書いてありました。よく見ると、本は19刷にもなっていて、発行は1990年代でちょっと昔の本ですが、売れ続けるのは納得です。
しかも、その本のアプローチは、タイトルは「石鹸」と絡まないのですよね。目次を見たり、立ち読みしないと石鹸作りのことがこうも詳しく書いてあるとは想像できないのです。
すると、もうその本が私の師匠です。
情報を掘り下げて調べ、実体験から得たものもあるから本を書こうと思えば書ける
せっけん作りは素人ですが、自分で調べた情報と、いろいろな過程で失敗して調べて得た知識をかみ合わせれば、本を書く事もできると思います。もちろん、もっと試作を重ねていくことは必要ですが、実際に書くかどうかは別として、それぐらいの情報量は得ているのと、この先も得ることができると思っています。
結局、私はずっと本を書いてきたので、どこまで調べれば本が書けるのかということは体感としてわかっているのですが、この探究心がないと、やはり本を書くことは困難です。
前述したように、ネットの情報でも、丁寧に書いてあっても、やはりあと一歩の情報がないことがほとんどです。
結局、あまり深く考えずに、どこかのレシピを紹介しているだけだったり、人に伝えることを本気で考えていないからだと思いますけどね。
それに、本によっては、単なるレシピだけでもいいわけですから、書けないことはないかもしれませんが、でも、どこかに説得力に欠けるところが出てくるでしょうね。
人々が欲しい「あと一歩」の情報を得なければ、本の説得力は増しません。
そして、「あと一歩」を書くには、探究心がなければならないのですよね。結局、情報を整理する段階で、自分の疑問を解消していくことが、本を書く素材を良いものに仕上げていくコツなのです。
今回、ひさしぶりに良書に出会えて、やはり本はこうであって欲しいと思いました。
本の良さは、一冊でまとまった情報をきちんと得られるところ。そういう本の特徴も考えて、盛り込んでいく内容を調整していくことも大切な作業です。
ちなみに、ここで取り上げた本ってどんな本?と思ったら、即座に聞くのではなく、自分で調べてみてくださいね。探究心があるかないかは、そういうところに現れます。
投稿者プロフィール
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でんでんむし出版代表 傍嶋恵子(そばじまけいこ)
1997年より、パソコン普及期に必要とされたパソコン解説書を、テクニカルライターとして13年間にわたって約60冊執筆。豊富なライティングと書籍企画経験や実績を生かして、2013年、電子書籍出版を支援する「でんでんむし出版」を設立。セルフパブリッシングを支援。また、電子書籍の普及による出版事情を考慮し、「本を書く」ということを寛容に捕らえて、現代のおける人々の情報発信の重要性に目を向けるている。「本を書く」というと、多く出版社は「本を作る」ことに焦点を置く。が、コンテンツの指導ができない出版社が多いなか、本の内容に対して指導をし、優良なコンテンツを作り上げるところを強みとしている。
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